ワンセグ携帯のNHK受信契約義務

  • 2016.09.23 Friday
  • 14:56

弁護士の村田です。

 

さて、去る8月26日に、さいたま地裁にて、ワンセグ携帯を持っている場合にNHKの受信契約義務があるかどうかが争われた事件で、受信契約義務はないとした判決が出たとのニュースがありましたので、今日はその記事です。

 

NHKの受信契約義務については、以前記事を書いたこともありますが、もう一度おさらいしてみましょう。

テレビ番組を受信することができる機器を所持している場合、基本的にはNHKと受信契約を締結しなければならない義務があります。

なぜかと言うと、放送法64条1項に、『協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない』と規定されているからです。

したがって、自宅にテレビがある場合、基本的には上記法律を根拠としたNHKの受信契約を拒絶することはできません。

 

ところが、昨今の技術の進歩から、スマートフォン等でテレビを見ることができるようになりました。

いわゆるワンセグ機能です。

テレビはないがワンセグ機能のある携帯電話を所持している場合に、上記放送法64条1項の規定に基づいてNHK受信契約を締結しなければならないのかが問題となったのが上記裁判です。

 

そして、さいたま地裁は受信契約を締結する義務はないとしました。

なぜかと言うと、上記放送法64条1項は『受信設備を設置した者は』『契約しなければならない』とありますが、携帯電話はあくまで『設置』ではなく『携帯』しているに過ぎないものであるから、同条文の適用はないと判断されたからです。

放送法の別の条文で、『設置』と『携帯』が分けて規定されていたことも、義務を否定する根拠となりました。

 

以上の次第で、さいたいま地裁ではワンセグ携帯の契約義務はないとされましたが、NHK側は不服であるとして控訴しているそうなので、高等裁判所で判断でひっくり返る可能性はあります。

 

もっとも、今現段階の裁判所では、ワンセグ機能のある携帯電話を持っていても契約義務はないとの判断をしていますので、今後NHKの勧誘が来た場合、その理屈で拒否することはできそうです。

 

余談ですが、ついこの間、私のところにも久しぶりにNHKの勧誘の人が来て、テレビはないから契約するつもりはないですと答えたところ、携帯電話は何を使っていますか?と聞いてきたことがありました。

もしこの時、私がワンセグ機能があるものを答えていたら、じゃあ契約してくださいと迫るつもりだったのかもしれません。

その場合、上記裁判例との整合性についてその勧誘の人がどのように答えるのか非常に興味深いところではありましたが、勧誘の人をいじめても仕方ないので、問答するのはやめておきました。

自殺による不動産価値の低下

  • 2016.08.16 Tuesday
  • 13:30

弁護士の村田です。

 

さて,先日,東京地裁にて,とあるオフィスビルのテナント企業の従業員がビル内で自殺したとして,不動産会社が当該テナント企業に対し,従業員の自殺による不動産価値の下落分の損害約5000万円の損害賠償請求をしたところ,判決にて,テナント企業には従業員の自殺による価値低下を防ぐ義務があるとして,テナント企業に対する約1000万円の損害賠償を認めたとのニュースを見かけました。

 

という訳で,今日は自殺による不動産価値の低下のお話です。

 

賃貸物件に,雨漏りがするだとか,壁に穴が開いているだとか,物理的な瑕疵があった場合,それによって不動産価値が下がるのは当然のことです。

また,借主がその物理的な瑕疵を作ったのであれば,借主はその損害を賠償しなければなりません。

なぜなら,借主は用法を順守して当該賃貸物件を適切に使用する義務を負っており,当該賃貸物件を毀損するような使い方をした場合,当該義務違反が認められるからです。

 

では,借主が自殺してしまい,人が死んだ物件なんか借りたくないということで借り手がつかなくなった場合はどうでしょうか?

物理的な瑕疵とは違い,賃貸物件に目に見える毀損部分が生じた訳ではありません。

けれど,普通の人なら自殺者が出たような部屋に住みたいとは思わないでしょう。

このように,目には見えないけれど,心理的には当該物件の価値が下がってしまったような場合(講学上は「心理的瑕疵」と呼びます。),それが損害として認められるか問題となります。

この点,裁判実務上では,賃貸物件に自殺による心理的瑕疵が生じた場合,それは損害賠償の対象となるとするのが一般的です。

例えば,借主が自殺して,次の借り手が見つからなくなったことから,家賃を大幅に下げざるを得なくなったような場合,当該自殺した借主の善管注意義務違反があったとして,当該借主の連帯保証人に対して値下げした家賃分の損害賠償を認めた裁判例もいくつか存在しています。

このように,賃貸物件の借主が自殺した場合,自殺による心理的瑕疵は損害に当たるとして,その連帯保証人等に損害賠償責任が認められる可能性があるのです。

 

では,翻って本件冒頭のニュースの事件を見てみましょう。

このニュースの事件の場合,起きたのはテナント企業の従業員による自殺です。

果たして,従業員が自殺した場合についても,テナント企業は責任を負うのでしょうか?

この点,冒頭で記載したように,東京地裁はテナント企業には従業員の自殺を防ぐ義務があったとして,当該義務違反を理由とする損害賠償責任を認めたようです。

もっとも,当該防ぐ義務がいかなる内容を言うのかは,ニュースの記事だけでは不明です。

すなわち,会社としてきちんと従業員のメンタルケア等もしていたのに,従業員がプライベートな事情により突発的に自殺した場合にまで,義務違反があったとして損害賠償責任が認められるのかどうかまでは,ニュースからは判然としません。

この判決の全文が読めればそこも分かったのかもしれませんが,ネットで全文を見つけることはできませんでした。

したがって,テナント企業としては従業員に対する配慮を尽くしていた場合,義務違反はなかったとされる可能性もあるのかもしれません。

 

いずれにしても,企業の皆様は,上記裁判例のように,従業員が当該オフィスビル内で自殺した場合,テナント企業に損害賠償責任が肯定される可能性もあるということですので,従業員に対するメンタルケア等には十分にご注意ください。

遺言の日

  • 2016.04.16 Saturday
  • 15:50
弁護士の村田です。

さて、去る4月15日は、「良(4)い遺言(15)の日」ということで、広島弁護士会でも「良い遺言の日記念シンポジウム」を実施しました。
シンポジウムには総勢70名近くの多数の方々にご参加いただき、また、その後に実施しました無料相談会にも多くのご参加いただきましたこと、この場を借りてお礼申し上げます。

そんな訳で、今日は遺言に関する小話を少ししてみようかと思います。
遺言とは何か、なんてことは今更滔々と語る必要もありませんが、世の中には遺言がなくて今まで仲の良かった家族ですら遺産を巡って紛争が起きてしまった、なんて事例はそれこそ数え切れないほどあります。
備えあれば憂いなし、という訳ではありませんが、いくら生前は仲が良いように見える家族でも、ご自身が亡くなった後にどうなるかまでは分かりません。
そんな時に余計なトラブルを起こさないためにも、元気なうちに遺言を書いておくことは非常に大事です。遺産がある程度まとまった金額ある場合には、尚更です。
ですので、自分の家族は大丈夫だ、と思っていても、遺言を書いておくに越したことはないのです。
もし遺言の書き方が分からない、という方は当事務所までご相談に来ていただければ私も含め当事務所の弁護士が一からレクチャーさせていただきます(露骨なダイレクトマーケティング)。

さて、そんな遺言ですが、あまり一般には知られていない法的手続に「検認」という手続があります。
これは何のかと言うと、ご家族が亡くなられた後、亡くなられた方の遺言を発見した場合、まずは家庭裁判所に持って行って裁判所で中身の確認をしなければならない手続のことを言います。
たとえば、遺言が封筒などに入っていて、封印がなされていた場合には、勝手に開封してはいけません。家庭裁判所に持参して、裁判所の立ち会いのもとで中身を確認する必要があるのです。
このことは法律で定められており、遺言を発見した相続人の義務となっています。
では、なぜこのような手続があるのかというと、裁判所に持って行って裁判所の立ち会いのもとで遺言の内容を確認することで、それ以後の遺言の偽造を防止するためです。また、相続人全員に遺言の存在を知らしめるという意味もあります。
もし、仮にこの検認手続を怠った場合、当該遺言が無効になるということはありませんが、5万円以下の過料の支払いという罰則を受けることになりますので、ご注意ください。
したがって、遺言を発見した場合には、何はともあれまずは最寄りの家庭裁判所に連絡をして、どうすればいいのか聞くのが一番でしょう。
この検認という手続は手続自体の知名度が低いせいかよく忘れられがちですので、お困りの際には弁護士に相談に行くのも良いかと思います。

なお、上記検認手続が必要となるのは自分で遺言を作成する自筆証書遺言のみであり、公証役場で作成します公正証書遺言では不要ですので、検認手続を相続人にさせるのが煩わしいとお考えであれば、費用は多少かかりますが公正証書遺言で遺言を作るのをお勧めします。

刑事事件と責任能力

  • 2015.11.09 Monday
  • 12:16
弁護士の村田です。

さて,弁護士が刑事裁判で非難される要素の一つに,責任能力の問題があります。
よく,テレビのニュースなどで,殺人事件等の重大な事件の際に,弁護人が「被告人は心神喪失状態にあったことから無罪である」との主張をしたことに対して,「実際に人が殺されているのに犯人が無罪になるのはおかしいんじゃないのか!」と憤る方がいらっしゃいます。そして,裁判の場でそのような主張をする弁護人も「けしからん弁護士だ。被害者のことをどう考えているのか!」と思われることも多くあるかもしれません。
しかしながら,日本の刑事裁判では,実際に被告人が心神喪失状態にあった場合,無罪とすべきルールが法律によって定められています。
刑法39条1項に「心神喪失者の行為は,罰しない」と規定されており,心神喪失時に行った犯罪行為について刑罰を加えることができないことになっているのです。
そして,弁護士は職務上義務として,最善弁護義務というものを課せられています。
これは,弁護士は,刑事事件の際,被疑者及び被告人にとって最善の結果となるよう弁護活動をしなくてはならない義務のことを言います(なお,ここでいう「最善」がどういう意味を持つのかについては昔から多くの議論があるところです)。
したがって,自身が担当している被告人に,心神喪失の疑いがある場合には,上記最善弁護義務の観点から言っても,弁護士は裁判で心神喪失の主張をしなくてはならない訳です(逆にしなかった場合は職務怠慢になるでしょう)。
以上の経緯から,被害者等からすれば噴飯ものの主張なのかもしれませんが,弁護士が刑事裁判の場で心神喪失等の主張をして,被告人の刑事責任能力を争うことは,少なくとも業界的には別段おかしな話ではないということになります。

では,実際にどのように争っていくことになるのでしょうか。
まず,そもそも裁判で心身喪失が疑われそうな被疑者というのは,起訴前の捜査段階で,検察官が請求して精神科医による簡単な精神鑑定を受けていることが一般的です。
これを簡易鑑定といい,精神科医の先生が事件に関する捜査記録や被疑者の診療記録などを読んだ上で,被疑者と数時間面談して,被疑者に刑事責任能力があったかどうかを判断することになります。
この段階で,刑事責任能力がなかった可能性が高いとの鑑定結果が出た場合,検察官はおそらくその被疑者を起訴することなく医療観察法に基づく強制入院等の手続をとっていくことになるでしょう。
一方で,簡易鑑定にて刑事責任能力に問題なしとの鑑定結果が出た場合,恐らくそのまま起訴されることになります。
そこで,弁護人としては,検察官からその簡易鑑定に関する鑑定書の開示を受けた上で,当該鑑定書を裁判で覆すことができるかどうかを検討していくことになります(簡易鑑定は比較的短い期間で鑑定をするため,その正確性は慎重に確かめる必要があります)。
場合によっては,簡易鑑定を実施した先生にアポをとって,実際に会いに行って話を聞くことも検討すべきでしょう。
そして,その上で,やはり裁判の場では責任能力を争う必要があると判断した場合には,裁判所に正式な精神鑑定の請求をしていくことになります。
これが,よくテレビのニュースなどで出てくる精神鑑定請求というやつですね。
もちろん,当該請求が必ずしも認められるとは限りません。
簡易鑑定が既に行われており,それで十分だと判断された場合,弁護人からの精神鑑定請求は却下されることになります。
一方で,簡易鑑定では不十分であり,正式な鑑定をすべきである判断された場合には,正式な責任鑑定が実施されることになります。
その場合には,病院に1か月程度入院させた上で,長い時間をかけてじっくり精神鑑定をすることがあります。
しかしながら,正式な精神鑑定をしたからと言って,簡易鑑定と違う結果が出る保証はありません。
せっかく正式な精神鑑定をしたのに,やっぱり責任能力には問題がないという鑑定結果が出てくることも十分ありえます。
そうなった場合には,裁判に当該鑑定を行った先生を証人として呼んで,なぜそのような鑑定結果になったのか,どこか判断にミスはなかったのか尋問して聞くことを検討しなくてはならないでしょう。
以上のような手続を踏んだ上で,最終的に裁判所が被告人の責任能力に問題があったのかどうかの判断をすることになります。

さて,長々と刑事裁判における責任能力について話をしましたが,裁判の場で責任能力の主張をする際に,よく被告人から「ダメならダメでいいけども,きちんと裁判の場で自分の病気のことについて判断してもらいたい」という話を受けることがあります。
その病気は統合失調症だったり,アルコール依存症だったりする訳ですが,本人たちも,日常生活においてその病気に苦しめられてきたにも関わらず,1時間程度の問診で終わってしまう簡易鑑定で簡単に「あなたの病気と事件のことは無関係ですよ」と言われても納得できないところ多くあるということなのでしょう。
そして,正式な精神鑑定をした上で結果的に判決にて「あなたは正常ですよ」と言われたのだとしても,裁判の場で責任能力の主張をせずに不満が残る状態で有罪判決を受けるよりかは,本人たちが納得しやすいという意味でも今後の更生に良い影響を与えるのではないかな,などと思ったりすることもあります。

中絶費用の負担

  • 2015.06.23 Tuesday
  • 11:12
弁護士の村田です。

さて,今日は少々重たいテーマではありますが,中絶費用の負担義務について話してみたいと思います。

男女が性交渉を持った場合に,望まれて子供が出来た場合には何の問題はないのでしょうが,時には予定外に子供が出来てしまうことが世の中にはままあります。
この場合,女性側としては,そのまま子供を産むのか,あるいは中絶するのかという非常に厳しい判断をしなくてはならないことになるでしょう。
特に,その男女が未婚のカップルだった場合には,よりシビアな判断となることが想定されます。
その際,色々な事情から子供を産むことはできないと判断した場合,中絶せざるを得ない状況になるのでしょうが,その中絶費用を誰が負担するのか,ということで問題になることがあります。

すなわち,中絶手術を受けるのは女性側ですので,たちまちは女性側が病院に中絶費用を支払わなければどうしたって中絶することはできません。
そこで,女性側としては当然相手の男性に中絶費用を負担してくれと請求することになりますが,ここで男性が中絶費用を負担することなく逃亡してしまうことも残念ながら現実としてはあり得る話です。
その場合,女性は男性に対して最終的に自分で支払った中絶費用も含む損害賠償請求をして回収するほかありません。
しかしながら,男性が支払う理由はないと拒否した場合,果たして裁判で争って認められるのでしょうか。

この点,従来は男性への損害賠償請求は認められないと考えられていました。
なぜなら,結果的に子供が出来てしまったとしても,女性側も子供ができてしまいかねない性交渉を持つことについては同意していた以上,男性の行為には何ら違法性がないと考えられるからです(女性が拒否していたにも関わらず男性が避妊しなかった場合は当然別です)。
しかしながら,場合によっては男性への損害賠償請求が認められるとした裁判例もあります。

東京地裁平成21年5月27日判決の裁判では,妊娠して中絶した女性が男性に対して中絶したことを理由とする慰謝料等の損害賠償請求をしたところ,その一部が判決で認められました。
この裁判例では,その理由として以下のように述べています。
すなわち,前提として,「共同して行った先行行為の結果,一方に心身の負担等の不利益が生ずる場合,他方は,その行為に基づく一方の不利益を軽減しあるいは解消するための行為を行うべき義務があり,その義務の不履行は不法行為法上の違法に該当するというべきである」とした上で,「本件性行為は,原告と被告が共同して行った行為であり,その結果である妊娠は,その後の出産又は中絶及びそれらの決断の点を含め,主として原告に精神的・身体的な苦痛や負担を与えるものであるから,被告はこれを軽減しあるいは解消するための行為を行うべき義務があった」にも関わらず,「被告はどうしたらよいか分からず,具体的な話し合いをしようとせず,原告に決定を委ねるのみであったのであって,その義務の履行には欠けるものがあった」と認定し,原告である女性に生じた損害の2分の1を賠償するよう認めました。

つまり,簡単に言えば,一緒に子供を作った以上,男性には,中絶する際に女性側に生じる不利益をできる限り軽減しなければならない義務が生じて,男性が女性からの相談に真摯に乗ることなく放置するようなことをした場合には当該義務違反を理由とする損害賠償責任を負うことになる,ということです。
そして,この地裁の判断は高裁でも維持されています(東京高裁平成21年10月15日判決)。
また,同趣旨の裁判例としては東京地裁平成24年5月16日判決があります。

このように,事案によっては損害賠償請求をすることが可能となる場合もありえますので,中絶費用の負担等でもめた場合には,弁護士にご相談に行くことをお勧めします。
 

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