自殺による不動産価値の低下

  • 2016.08.16 Tuesday
  • 13:30

弁護士の村田です。

 

さて,先日,東京地裁にて,とあるオフィスビルのテナント企業の従業員がビル内で自殺したとして,不動産会社が当該テナント企業に対し,従業員の自殺による不動産価値の下落分の損害約5000万円の損害賠償請求をしたところ,判決にて,テナント企業には従業員の自殺による価値低下を防ぐ義務があるとして,テナント企業に対する約1000万円の損害賠償を認めたとのニュースを見かけました。

 

という訳で,今日は自殺による不動産価値の低下のお話です。

 

賃貸物件に,雨漏りがするだとか,壁に穴が開いているだとか,物理的な瑕疵があった場合,それによって不動産価値が下がるのは当然のことです。

また,借主がその物理的な瑕疵を作ったのであれば,借主はその損害を賠償しなければなりません。

なぜなら,借主は用法を順守して当該賃貸物件を適切に使用する義務を負っており,当該賃貸物件を毀損するような使い方をした場合,当該義務違反が認められるからです。

 

では,借主が自殺してしまい,人が死んだ物件なんか借りたくないということで借り手がつかなくなった場合はどうでしょうか?

物理的な瑕疵とは違い,賃貸物件に目に見える毀損部分が生じた訳ではありません。

けれど,普通の人なら自殺者が出たような部屋に住みたいとは思わないでしょう。

このように,目には見えないけれど,心理的には当該物件の価値が下がってしまったような場合(講学上は「心理的瑕疵」と呼びます。),それが損害として認められるか問題となります。

この点,裁判実務上では,賃貸物件に自殺による心理的瑕疵が生じた場合,それは損害賠償の対象となるとするのが一般的です。

例えば,借主が自殺して,次の借り手が見つからなくなったことから,家賃を大幅に下げざるを得なくなったような場合,当該自殺した借主の善管注意義務違反があったとして,当該借主の連帯保証人に対して値下げした家賃分の損害賠償を認めた裁判例もいくつか存在しています。

このように,賃貸物件の借主が自殺した場合,自殺による心理的瑕疵は損害に当たるとして,その連帯保証人等に損害賠償責任が認められる可能性があるのです。

 

では,翻って本件冒頭のニュースの事件を見てみましょう。

このニュースの事件の場合,起きたのはテナント企業の従業員による自殺です。

果たして,従業員が自殺した場合についても,テナント企業は責任を負うのでしょうか?

この点,冒頭で記載したように,東京地裁はテナント企業には従業員の自殺を防ぐ義務があったとして,当該義務違反を理由とする損害賠償責任を認めたようです。

もっとも,当該防ぐ義務がいかなる内容を言うのかは,ニュースの記事だけでは不明です。

すなわち,会社としてきちんと従業員のメンタルケア等もしていたのに,従業員がプライベートな事情により突発的に自殺した場合にまで,義務違反があったとして損害賠償責任が認められるのかどうかまでは,ニュースからは判然としません。

この判決の全文が読めればそこも分かったのかもしれませんが,ネットで全文を見つけることはできませんでした。

したがって,テナント企業としては従業員に対する配慮を尽くしていた場合,義務違反はなかったとされる可能性もあるのかもしれません。

 

いずれにしても,企業の皆様は,上記裁判例のように,従業員が当該オフィスビル内で自殺した場合,テナント企業に損害賠償責任が肯定される可能性もあるということですので,従業員に対するメンタルケア等には十分にご注意ください。

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