DV被害に対する法的保護

  • 2015.06.11 Thursday
  • 13:10
弁護士の村田です。

先日,某有名元アイドルが夫から暴力を受けて,夫がDVで逮捕されたとのニュースを見ましたので,今日はDV被害について少しお話します。

さて,DVとは基本的には「配偶者からの暴力」(Domestic Violence)だと定義され,結婚相手から受ける暴力行為を広く含みます。そんなDV被害に対する法的保護について定めたものが「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」,いわゆるDV防止法です。
この法律では,DV被害に遭った際の法的保護として,行政機関による保護について定めているのはもちろんのこと,配偶者からの暴力・脅迫を受けていた被害者が,さらに配偶者から暴力を受けることで生命・身体に重大な危害を受ける場合には,裁判所が保護命令を出すことができる旨定めています。
この保護命令とは,大きく分けて接近禁止命令と退去命令の二つに分けられて,前者は被害者に近づくことを禁止する命令,後者は同居している場合にその家から出ていくことを義務付ける命令のことを言います。
そして,この保護命令に相手が違反した場合には,1年以下の懲役又は100万円以下の罰金の刑罰が科せられることになるのです。

このようにして,DV防止法はDV被害からの法的保護を定めているのですが,この法律については,保護される範囲がどこまでなのか,という点についてもう少し説明する必要があります。
すなわち,離婚した相手からの暴力や,結婚はしていない内縁関係にある恋人からの暴力,さらには婚約者でもない恋人からの暴力などについてまで保護の対象としているのか,という点についてよく誤解されることがあるからです。

まず,離婚した元配偶者からの暴力についてですが,これはDV防止法の保護の対象となることがあります。
すなわち,DV防止法は,配偶者からDV被害に遭って,その後離婚したにも関わらず,引き続き相手方から暴力を受けている場合についても,保護の対象となる「配偶者からの暴力」に含めているからです(同法1条1項)。
ただ,ここで注意が必要なのは,保護の対象となるのが元配偶者から引き続き暴力を受けている場合に限定されているため,離婚するまでは暴力を受けたことはなかったにも関わらず,離婚後に元配偶者から暴力を受けるようになった場合については,DV防止法の保護の対象とはなっておりません。したがって,そのような場合には,DV防止法ではなくストーカー行為等規制法などの法律による保護を受けていく必要があります。

次に,内縁関係にある婚約者からの暴力についてですが,これもDV防止法の保護の対象となります。
すなわち,DV防止法は「配偶者」の定義として,婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者も含むとしているからです(同法1条2項)。
したがって,婚姻届を出していない内縁関係にある場合でも,相手方から暴力を受ければDV防止法の保護の対象となります。

では最後に,婚約者ですらない恋人からの暴力,いわゆるデートDVについてまで保護の対象となっているのでしょうか。
これは,原則としてDV防止法の保護の対象とはなりません。
DVの言葉のとおり,基本的には配偶者からの暴力行為を前提とした法律になっているからです。
しかしながら,デートDVであっても例外的に保護の対象となることがあります。
それは,その交際が「生活の本拠を共にする交際」であり,かつ,その共同生活が「婚姻関係における共同生活に類する共同生活」である場合です。
すなわち,結婚の意思は有していないが(つまり内縁ではない場合),結婚生活とほぼ同様の形で交際相手と同棲している場合には,その交際相手から受けた暴力行為もDV防止法の保護の対象となります(同法28条の2)。
言い換えれば,同棲していない恋人からの暴力や,同棲しているけども,恋人ではなく単なるルームシェアだったりする場合には,保護の対象からは外れることになります。

以上のことを簡単にまとめると,
配偶者○(全面的に保護)
内縁○(全面的に保護)
離婚後△(保護されることがある)
恋人△(保護されることがある)
ということになります。

したがって,配偶者からのDVはもちろんのこと,恋人から暴力を受けた場合でも,一人で解決しようとするのではなく,行政機関や警察,弁護士などの専門機関に相談に行って法的に対処することが可能かどうか検討されることをお勧めします。

 

労災保険受給者の解雇

  • 2015.06.09 Tuesday
  • 13:31
弁護士の村田です。

さて,本日の新聞に「労災受給者も解雇可能 専修大元職員訴訟 最高裁が初判断」と題する記事が載っていましたので,その紹介です。

新聞に載っていた情報によると,裁判で争われた事案は次のとおりです。
すなわち,専修大に勤めていた職員の男性(原告)は,2002年頃から,首や腕に痛みが生じる頸肩腕症候群だと診断され,2007年に労災認定を受けた後休職していましたが,その間労災保険の給付あるものの,専修大からの療養費の補償はなく,2011年に専修大からその男性に対して打切補償として約1630万円の支払いがなされて,そのまま男性が解雇されたという事案で,男性が解雇無効を求めて提訴したというものです。
一審,二審とも,「打ち切り補償の適用は雇用主から療養補償を受けている場合に限られ,労災保険の受給者は含まれない」として,解雇無効と判断していましたが,この度,最高裁では,「労災給付は,使用者による補償に代わる制度であり,使用者の義務はそれによって実質的に果たされている」と判断して,労災保険受給者でも解雇の対象となることを前提としたうえで,解雇に合理性があったかどうかをさらに審理するために,事件を東京高裁に差し戻した,というのが今回の事案の概要です。

さて,そもそも労災によって休養を余儀なくされた労働者を解雇することができるのか,という点からまずお話します。
これは,原則としてできません。労働基準法は,「使用者は,労働者が業務上負傷し,又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後三十日間」「は,解雇してはならない」(同法第19条1項本文)と定めており,労働者が労災によって怪我や病気を患って療養のために仕事を休んでいる間は解雇してはいけないことになっているからです。
ただし,これには例外があります。
それは,打切補償を支払った場合です。その場合には,労災による怪我や病気で療養のために休業している労働者でも,解雇の対象としてもよい旨法律で定められています(同条1項但書)。

では,打切補償とは何なのかについて説明します。
まず,使用者は,労働者が労災によって負傷した場合,必要な療養費を負担しなければなりません(同法75条1項)。仕事が原因で怪我をした以上,治療に必要な費用は会社が負担しなさいという当たり前のことを定めたものです。
しかしながら,いつまで経っても怪我が治らない場合,会社は仕事をすることができない労働者のためにずっと費用を負担し続けなければならないことになります。
そういった事態を回避するために,労働基準法は,「(療養のための)補償を受ける労働者が,療養後三年を経過しても負傷又は疾病がなおらない場合においては,使用者は,平均賃金の千二百日分の打切補償を行い,その後はこの法律の規定による補償を行わなくてもよい」(同法81条)と定めており,これを打切補償といいます。
したがって,労災によって負傷した労働者が,3年経っても怪我や病気が治らない場合,使用者は当該労働者に1200日分の給料相当の打切補償を支払うことで,以後は当該労働者を解雇の対象とすることを法律は認めている訳です。

それを踏まえて前記判例の事案を見ると,専修大は労災によって病気にかかった原告に対して,療養費の補償をしていませんでしたが,解雇する際に必要な打切補償の支払いはしていた,という事実関係にありました。この場合,法律は,解雇制限を解除させる打切補償をするには使用者が療養費の補償をしていることを前提とした規定となっていますので,専修大の行った打切補償は,療養費の補償がなかったという点において,解雇制限を解除させる打切補償ではなかったと考えられます。そのことを指摘したのが,一審と二審でした。
しかしながら,最高裁は,専修大が療養費を補償していなかったとしても,この男性には労災保険による労災給付がなされており,これが使用者による療養費補償の代わりになるものであることから,専修大が療養費の補償をしていなかったとしても,解雇制限を解除させる打切補償として認めることができ,当該労働者は解雇の対象となると判断した訳です。

この判断は最高裁で初めてなされたものですので,以後,同種事案で非常に大きな意味を持つことになりますが,大事なのは,仮に解雇制限を解除させる打切補償をしていたとしても,それはあくまで打切補償により当該労働者を解雇の対象とすることが許されるようになったというだけで,無条件で解雇することが許される訳ではないということです。
打切補償を支払ったとしても,その解雇に客観的合理的な理由がなく,社会的にも相当でない場合には解雇権権利濫用であるとして結局無効となりますので,その点はご注意ください。
いずれにせよ,労働者を解雇する際には法的に言っても細心の注意が必要となりますので,ご不安に思われた場合には,弁護士に相談に行くことをお勧めします。

枕営業は合法?

  • 2015.05.28 Thursday
  • 17:57
弁護士の村田です。

先日,枕営業に関する興味深い裁判例が出ていたとするニュースを見ましたので,ご紹介します。

さて,その裁判の中身なのですが,夫がクラブのママと長年に渡って性交渉を持っていたとして,妻がそのクラブのママに対し,金400万円の損害賠償請求をしたところ,その請求が棄却されたというものです。
判決では,請求を認めなかった理由として,まず前提として,「売春婦が対価を得て妻のある客と性交渉しても、客の求めに商売として応じたにすぎない」ことから,その場合「何ら結婚生活の平和を害するものでなく、妻が不快に感じても不法行為にはならない」とした上で,今回クラブのママが夫と性交渉を持ったのも枕営業の一環であって,枕営業は「対価の支払いが、直接か間接かの違いに過ぎない」という点で売春と同じものであることから,クラブのママが夫と枕営業の一環で性交渉を持ったとしても,「結婚生活の平和」を害するものではなく,不法行為は成立しないと判断しています。

このように,なかなかすごいことをこの判決では言っているのですが,まずそもそも論として,不倫であることを知りながら結婚している男性と性交渉を持った場合,法律上,その夫が妻に対して慰謝料を支払わなければならないのは当然のこと,不倫相手の女性も,夫と一緒に妻の婚姻生活の平和を破壊したとして,共同して妻に対する損害賠償責任を負うことになります。
したがって,上記のクラブのママも,原則論からすれば,夫に妻がいることを知りながら性交渉をしていますので,妻に対する損害賠償責任を負うはずです。
しかしながら,上記判決は,売春の場合は商売として性交渉に応じたに過ぎないことから結婚生活の平和を害するものではなく,それは枕営業も同じであるという理由から,夫が長期間枕営業に応じて性交渉を持っていたとしても,クラブのママ側には損害賠償責任は発生しないとしたのです。
判決の原文を確認した訳ではありませんので,何か特殊な事情があったのかもしれませんが,ニュースに出てきた事情だけを見ると,いくら枕営業でも長期間妻のいる男性と性交渉を持っていたのであれば,結婚生活の平和が害されることはないとはとても言えないような気がしますが(少なくとも,妻にバレた場合離婚の危機が発生するのはほぼ間違いないでしょう),いかがでしょうか。

確かに,上記判決が言うように,風俗店での売春行為の場合にまで,女性側に損害賠償責任を負わせるのはいかがなものかという判断はありうるような気はします(以前の記事でも書きましたが,ソープランドで売春行為が行われているのは公知の事実であり,客が既婚者であったとしても,ソープ嬢は客に対するサービスを断ることは困難でしょうから,その場合にまで不倫だとしてソープ嬢に賠償責任を負わすのは酷でしょう)。けれど,枕営業の場合には,敢えて配偶者のいる異性に枕営業をするという選択を自発的にしているのですから,枕営業をした側に賠償責任を負わしても不合理ではないように思います。

いずれにしても,なかなか特殊な判決であることは間違いないので,今後この判決が出ているからと言って,枕営業をしても相手方の配偶者に不倫の慰謝料を支払う必要はないと判断するのは早計だと思われます。
 

ぼったくり被害への対処法

  • 2015.05.07 Thursday
  • 00:34
弁護士の村田です。

さて、最近あんまり真面目な記事を書いていないことに気がつきましたので、たまには真面目な記事でも書こうと思います。
そんな訳で、今日のテーマはぼったくり被害です。

広島には、流川というそれなりに栄えている繁華街がありますので、年末年始や年度末年度始めといった飲み会シーズンには、多くの人で賑わっています。
けれど、中には良くないお店も存在しており、お店に入ってちょっとお酒を飲んだだけなのに、数十万円の高額請求をされた挙句、支払わなかったら監禁されて脅迫された、なんてこともあるかもしれません。
そんなぼったくり被害に遭った場合、法的に対処するにはどうすれば良いのでしょうか。

まず、そもそもそのような高額請求をすることは法的に有効なのか?といった問題があります。
この点については、きちんと金額等が明示されている場合、お店が提供するサービスにどのような値段を付けようが基本的にはお店の自由なので、それだけで法的に無効となることはありません(ただし、あまりに高額な値段の場合、暴利行為であるとして無効となる可能性はあります)。
すなわち、大事なのは、料金体系がきちんと明示されているかどうか、そして実際に請求された金額がその料金体系に沿ったものであるかどうか、という点にあるのです。
その点を法的に規制しているものとして、広島には「酒類提供営業等に係る不当な勧誘、料金の取立て等の規制に関する条例」、いわゆるぼったくり規制条例が存在しています。
この条例がどのような規制をしているかというと、[繕發魑劼妨やすいように表示すること、表示した料金と異なる料金を告げたり著しく安い料金だと誤解するような勧誘をしないこと、支払いの際に乱暴な言動を交えるなど不当な取立てをしないこと、を主に規制しています。
そして、かかる規制にお店が違反した場合、行政から行政指導が入り、悪質な場合には営業停止処分が出されることもあります。

以上の点を踏まえて、では、実際にぼったくり被害に遭わない、又は遭った場合の対処方法については、以下のようにすることが推奨されるでしょう。
すなわち、広島では条例によって料金をきちんと表示される義務がお店に課せられていますので、まずはサービスの提供を受ける前にお店にて料金体系の説明をきちんと聞くことです。
この時点で、お店が料金の説明をきちんとしなかったりおかしな説明をした場合、そのお店は上記条例に違反しているお店ということで、限りなくブラックなお店ということになりますので、速やかにお店を出て近寄らないようにしましょう(あるいは、余裕があれば警察等に通報することも検討すべきでしょう)。
次に、一応料金の説明があって、安心してお酒を飲んだにも関わらず、支払いの段階になって高額な料金の請求を受けた場合、なぜそのような高額な料金になったのか、その明細をきちんと出すように要求しましょう。
大事なのは、絶対にこの段階でお金を支払っていけないということです。
なぜなら、客側が一度料金を支払ってしまった場合、仮にそれが無効な契約に基づくものであったとしても、それを取り返すためには裁判等を起こす必要があり、非常に手間と時間がかかるからです。
さて、次に、お店側に料金の明細を出すように要求したにも関わらず、お店が明細を出さない場合、明細を出さない限り絶対に支払わないと断固拒否しましょう。
それにも関わらず、料金を支払わないと店から出さないとお店が強固に迫ったきた場合、そのお店は上記条例に違反する不当な取立てをしていることになりますので、即座に警察に通報しましょう。
この時に大事なのは、警察には料金で揉めているという風には言わないことです。
なぜなら、警察は民事不介入ですので、料金で揉めているという内容の通報を受けても、それは民事の問題だということでなかなか出動してくれない可能性があるからです。
ですので、警察に通報するときは、お店に不当に監禁されている、あるいは脅迫を受けている、といった内容を話して、刑事事件である旨伝えることが大事です。
そして、警察に来てもらった際には、事情を説明して、明細を出してもらえるよう促してもらうのが良いでしょう。
最後に、お店が明細を出してきた場合には、その明細とお店で表示されている料金体系とが整合しているかどうかをきちんと確認しましょう。
整合していない場合、そのお店は不当請求をしていることになりますので、不当な部分は支払う必要性は全くありません。
したがって、事前に説明を受けた料金体系に沿った形で計算し直して、その部分だけを支払って帰りましょう。
ここで大事なのは、ぼったくりだからと言って1円も支払わなくて良い訳ではないことです。
ぼったくりだろうとお客はそのお店でサービスを受けている以上、事前に説明を受けた料金体系と合致する部分については有効な契約が成立していますので、その部分はきちんと料金を支払ってお店を出ていきましょう。

このように、大事なのは、〇前にきちんと料金について確認すること、∋拱Гい虜櫃砲發ちんと明細を確認すること、困ったら民事ではなく刑事事件であると警察に通報すること、です。
以上の点を守れば、ぼったくり被害に対して有効に対処することができると思われます。
が、実際にぼったくり被害に遭った場合、強面の店員に脅されて、上記したような強気の対応をすることができず、お店に脅されるまま唯々諾々とお金を支払ってしまった、なんてことも充分に考えられるところです。
そのようなことにならないよう、お店から料金支払いについて脅された場合、連絡が付く弁護士を知っているのであれば、すぐにその弁護士に電話して代わりにお店と交渉してもらうことをお勧めします。

弊所は、そのようなぼったくり被害とも戦っておりますので、もしお困りの際は、弊所にご一報することもご検討ください。

リベンジポルノ追記

  • 2015.03.12 Thursday
  • 11:48
弁護士の村田です。

さて,以前リベンジポルノについては法規制がなされ,今後は犯罪になる旨の記事を書きました。
が,今日,リベンジポルノ法違反で全国初の検挙がなされた旨の記事が出てましたので,追記しておきます。

記事の内容としては,容疑者は,別れた彼女が返事をしなくなっため,恨みが募り裸の写真をツイッターにアップしたとして,リベンジポルノ法違反で逮捕されたそうですが,前回も書いた通り,現行法では,復讐するために軽い気持ちでネット上にわいせつな画像をアップすると犯罪となり,逮捕されることになります。
また,女性側も,隠し撮りされた場合を除き,安易にそういったわいせつな写真等を撮らせないように気を付けましょう。いつ何時自分が被害者になるとも分からないご時世です。自己防衛は大切です。
そして,万が一被害に遭った場合には,臆することなく警察等に相談に行くことをお勧めします。

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